研究内容

はじめに

2016/4/11 研究紹介のファイルを新しくしました(こちら(PDF)をご覧ください)


 

【研究紹介】

炭素原子は生命の基礎をなす元素ですが、例えば活性炭や石炭、あるいは鉛筆の芯に使われる黒鉛(グラファイト)などの炭素原子が集まった炭素材料も、人類にとても身近な存在です。また、炭素原子はsp3, sp2, sp混成軌道のように実に多様な結合様式を示すユニークな元素でもあります。

近年、ナノスケールで規則的な構造をもつ炭素材料(ナノカーボン材料)が見つかり、非常に大きな注目を集めています。カーボンナノチューブとグラフェンに代表されるナノカーボン材料は、従来の炭素材料にない高い結晶性と規則性を有し、また現在の半導体に使われているシリコンの移動度の20倍以上の性能を示し、さらに機械的強度が極めて高いなど、とても魅力的な物質です。このように優れた特徴をもつグラフェンやカーボンナノチューブを使って、下の図のように次世代の電子デバイスや複合材料、バッテリーなどを作ろうとする研究が世界中で盛んに行われています。

当研究グループでは、このナノカーボン材料を中心として、

  1. 高度に構造を制御した成長法の開発
  2. 物性の測定
  3. 新規応用の開発
  4. 新規無機ナノ材料の探索

などの研究を進めています。

グラフェンのCVD成長法の研究

グラフェン(graphene)とは、炭素からなる原子1個分の厚さしかもたない原子シートです。このような炭素の薄い膜が、材料の中で最速のキャリア移動度を示し、また光も透過し、機械的にもフレキシブルであることから非常に期待が持たれる材料です。

当グループでは、特に化学的な視点からグラフェンの超高品質化や応用を見据えた層数制御などに挑戦しています。特に、グラフェンのエピタキシャルCVD成長は世界に先駆けて報告しました。さらに、基礎的なグラフェンのCVD成長のメカニズムについても研究を行っています。

* グラフェンの研究紹介用のポスターのPDFファイルはこちら からご覧ください(3.09MB)。

新規グラフェン構造体の研究

グラフェンはバンドギャップをもたない材料ですが、半導体としての応用のためにはバンドギャップを開くことが望まれています。その方法として提案されているのが、ナノリボンと呼ばれる細長いストライプ状のグラフェンです。また、二層のグラフェンにもバンドギャップを付与することができます。

当グループでは、ナノリボンをはじめ、様々な形状や厚さをもつグラフェンの自在な合成や加工法についてもブレークスルーを目指した研究を進めています。

グラフェンの物性と応用

グラフェンのトランジスタ作製などを通じ、当グループで合成するグラフェンのキャリア移動度、バンドギャップ、シート抵抗の評価などを行い、カーボンに基づいたエレクトロニクス(我々は「カーボンエレクトロニクス」と呼んでいます)の可能性を探索しています。

また、グラフェンに大きな影響を与える歪みの効果についても、フレキシブルエレクトロニクスへの応用の可能性や基礎的な観点から研究を行っています。

カーボンナノチューブの精密合成とエレクトロニクス応用

カーボンナノチューブはグラフェンを筒状に丸めたユニークな構造をもち、グラフェンと同様に集積回路や透明電極などエレクトロニクスへの応用が期待されています。ナノチューブの応用のためには、自在に並べて成長させる技術が不可欠です。また、カイラリティと呼ばれる構造制御技術も必要です。

当グループでは、ナノチューブの水平配向成長という画期的な方法を見つけ、この研究を発展させてきました。

二次元ナノシートに関する研究

無機物質からなるナノシートについても、原子サイズまで薄くした時の効果や物性などの興味から、CVDをベースとした研究を行っています。例えば、超伝導体であるNbS2ナノシートを、CVDで合成し転写したグラフェン上に成長させることに成功しています。

参考

JPC のビデオ

アメリカ化学会のHPに掲載されたビデオをこちら からご覧になれます。

グラフェンの研究紹介用のポスターのPDFファイルはこちら からご覧ください(3.09MB)。

過去の研究紹介

2012年 | 2009年 | 2003年