マイクロ波・ミリ波計測システムの開発と産業応用

●研究体制 : KASTEC, 筑波大学,日立マクセル(株), University of California at Davis (UCD)

   当研究室では,マイクロ波が誘電体を透過し誘電率が不連続な面で反射するという特徴を利用し, 被測定物体の内部構造を可視化する装置の開発を進めている。これに関連し, 平成14-16年度文部科学省科学技術振興調整費-産官学共同研究の効果的な推進「新方式マイクロ波プロフィールメータの開発」, 平成17年度産学連携戦略・次世代産業創出事業「マイクロ波アクティブセンサを用いた非侵襲生体計測の開発」等の研究課題が推進されてきた。

   応用分野として,生体情報計測,車載レーダー,非破壊検査などが考えられる。ここでは,
@)生体情報(心拍,呼吸,音声,脳機能等)を非接触かつ遠隔で測定し(図1),特に高年齢層を対象とした在宅での非侵襲診断法として,介護者の支援や介護予防にも貢献して行く,
A)生体反応を障害物越しに測定することにより,セキュリティ対策や災害救助などの分野でも実用化して行く,等生体計測について記述する。
   高齢化社会の到来により様々な方面における安全の確保が,また昨今では,世相を反映してテロ防止やセキュリティ対策が盛んに提唱されている。 本研究は,高性能マイクロ波センサ,デバイス,及び画像処理技術を組み合わせた総合的なシステム開発で,非接触の生体反応計測,動的内部構造可視化を通して上記要請にも対応することができる。



図1 マイクロ波アクティブセンサの応用例


   マイクロ波測定システムは,被測定対象にプローブ光を入射するためのマイクロ波発振器,伝送回路,及び送信アンテナと,反射波信号を受信するための受信アンテナ,検出器, 及び信号処理装置で構成される。反射波信号は干渉法により位相変化として導出される。干渉法では被測定媒質を伝搬した電磁波の変化,すなわち,反射面の変動による位相変化を検出するわけであるが, クオドラチャー検出を利用することにより,位相変化に比例する成分と振幅成分を計算機処理により算出できるため,両者を分離検出することが可能となる。位相変化は反射面の移動量に対応し, 微小位相変化を感度良く測定することにより,心臓付近の皮膚あるいは筋肉の微細変化すなわち心臓動態を評価することが可能となる。
   まず静かな状態で測定を行った。図2(a) にクオドラチャー検出器で得られた2つの信号を,図2(b) に両者から算出された位相変化を示す。 周期的な信号が観測され,位相変化における速い周期は約1秒であることから心臓動態に対応した信号,ゆっくりした信号は呼吸による変化に起因すると考えられる。


                                 (a)                                                           (b)
図2 (a) クオドラチャー検出器出力信号, (b) 位相成分の時間変化


   無拘束の状態で測定した結果を図3に示す。時間軸で見ると,心拍及び呼吸信号以外に人体の微妙な動きによると考えられる信号が混ざり合い, 識別は困難のようにも見られるが。反射波信号をフーリエ変換し,周波数スペクトル表示することで心拍信号と呼吸信号を明確に分離することができる。

                                     (a)                                                   (b)
図3 (a) 無拘束で測定した場合の反射波の時間変化, (b)周波数スペクトル


   マイクロ波計測システムにより,心臓近傍の筋肉及び周辺の皮膚での反射と思われる周期的な信号を得ることができた。本研究で用いた装置は, 空間分解約50 mmをもつ極めて高感度なシステムである。また1 mW以下の微弱な電力で測定が可能であった(総務省電波防護指針では,照射点での電力密度が1 mW/cm2 以下で あれば健康被害は無いと報告されている)。心臓動態や呼吸による変位を骨格の上から,かつ障害物を隔てて計測することが可能であるとともに, 長時間のモニタリングにも適用することができる。

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