研究内容

はじめに

「ナノテクノロジー」は現代の科学・産業において重要な基盤技術となっています。本研究室ではこの「ナノテクノロジー」を支えるナノマテリアルに関して、新たな合成法を開拓するとともに、その特性を活かした環境・新エネルギー、及びエレクトロニクスへの応用を進めています。特に、グラフェンやカーボンナノチューブで代表されるナノカーボン、そして遷移金属カルコゲナイド(TMC)や六方晶窒化ホウ素(h-BN)などの層状物質の原子レベルの厚みしかない超薄膜を中心に扱っています。これらの材料を化学蒸着法(CVD法)で高品質かつ選択的に成長する技術を研究するとともに、電子・光学物性や歪み特性などの測定、そして高移動度トランジスタや太陽電池等の応用を展開しています(下図)。さらに、最近では、全く新しい二次元材料や多様な二次元ヘテロ構造体の合成にも挑戦しています。


【研究紹介資料(PDF)】

私たちの研究についてまとめた解説「2次元物質から2.5次元物質科学へ」をこちらからダウンロードできます(3 MB)。最近の研究内容については、本解説をご覧ください。



  

1.グラフェンの超高品質合成と成長機構、およびエレクトロニクス応用

グラフェンは炭素のみからなり、原子レベルの厚みしかない究極的な二次元材料です。物質中で最高のキャリア移動度(電子の速さ)を示すため、優れた導電体であることに加え、その薄さから透明で機械的にも柔軟であることから大きな注目を集めています。本研究室では、このグラフェンの成長メカニズムの解明、層数の制御、単結晶グラフェンの成長、ドーピング技術などを検討するとともに、グラフェンを用いた電界効果トランジスタやCMOS、LSIなど優れたデバイスの研究開発を行っています。

 

  

2.二次元原子薄膜の創製と環境・新エネルギー・エレクトロニクス応用

遷移金属カルコゲナイド(TMC)は、MoやWなどの遷移金属と、硫黄などのカルコゲン原子が共有結合して形成される層状物質です。ごく最近、グラフェンと同じように、TMCで原子厚みの二次元シートが得られるようになっています。TMCは組成に応じて様々なバンドギャップを持ち、これらの多くが半導体的で高い可視光応答性を示すことから、フレキシブルな光センサー、メモリー、トランジスタなどとして期待されています。また、シートであることから表面積が大きく、水素発生触媒などの環境触媒としても注目されています。

本研究室では、TMCの一種で半導体であるMoS2やWS2、SnS2などの原子膜を均一に制御して合成する技術の開発や極性制御、成長メカニズムに関する研究を行っています。同時にこれらの材料の光物性や電子輸送特性の測定を行い、半導体、LSIや光センサーへの応用の可能性を探索しています。

TMC以外にも絶縁体として有効な六方晶窒化ホウ素(h-BN)の原子膜の合成も行っています。このh-BNは、グラフェンやTMCデバイスの基盤あるいは保護膜としての応用について研究しています。これらの材料に加えて、当研究室では世の中に存在しない二次元の原子膜を創出するチャレンジも行っています。

  

3.二次元原子膜の積層・面内ヘテロ構造の創出と新機能探索

当研究室では、グラフェン、TMC、h-BNのような多様な原子膜を作り出すだけでなく、これらの材料を自在に積層、あるいは横方向に接合して、全く新しい機能材料へと結びつけようとしています。例えば、色々な原子膜を重ね合わせると、自然には存在しないような積層構造を創出できるようになります。このように、積層・接合することで、従来にない電子・光・化学的な機能性が期待できます。

また、原子膜であることから、人の体に接着できるようなデバイスも作れ、ヒューマンインターフェースとしての応用も非常に興味深い対象となります。本研究室では、このようなヘテロ構造を自在に作りだすことに挑戦し、その成果を環境・新エネルギー・エレクトロニクス分野へと展開しようと研究を進めている。例えば、異なるTMCを組み合わせることで、高い効率とフレキシビリティを併せもつ太陽電池の研究を進めています。

     

おわりに

本研究室は、JSTさきがけ、最先端・次世代研究開発支援プログラム、NEDOプログラム、科学研究費補助金など多くのサポートを得て、高いレベルの研究を行っています。

また、海外からの留学生や博士研究員が在籍し、インターナショナルな雰囲気もあります。

     

参考

JPC のビデオ

アメリカ化学会のHPに掲載されたビデオをこちら からご覧になれます。

グラフェンの研究紹介用のポスターのPDFファイルはこちら からご覧ください(3.09MB)。

過去の研究紹介

2017年度の研究紹介(web版)はこちら

グラフェンの研究紹介用のポスターのPDFファイルはこちら
2016/4/11 研究紹介ファイル(PDF)
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